DARK TALE OASIS

主に映像作品にふれて、思った事を書いていきます

今だからDEEP PURPLE「SLAVES AND MASTERS TOUR 1991」を思う

  RAINBOWの三代目ヴォーカリストとしてリッチー・ブラックモアに見出されたジョー・リン・ターナーは、いかにもリッチー好みのルックスをしたイイ男だった。ジョーは確かにへたくそな歌い手ではない。アメリカ進出が念願だったリッチーにとっては、何よりもルックス重視だったのだろうが、ジョーはそれなりの実力は示したというべきだろう。ジョーが参加して三枚目となるアルバム「BENT OUT OF SHAPE」は、その楽曲とジョーの個性が抜群の形でマッチした名盤だろう。このアルバムに関して言えば、ジョー以外のヴォーカルはもはや考えられない。これだけPOPでありながら、ハード・ロックの愉悦を残しているアルバムはなかなか見つからない。ドカンと一発みたいな決定的な楽曲はないが、全ての楽曲が高いレベルで提示されているのが素晴らしい。実はこれだけ質の高いアルバムはそうはない。嘘だと思うなら、それこそ百枚でも二百枚でもハード・ロックと呼ばれるバンド達のアルバムを聞いてみて欲しい。聞けば分かるさ、迷わず聞けよ。少なくとも私は聞いたし、その上で断言しているのだ。もちろん人それぞれ好みがあるし、客観的に楽曲を聴き比べるなんて普通に考えて不可能だ。それでもかなりの人がこの意見に賛同してくれるだろうという自負はある。音楽というものは基本的に慣れという要素が必要だ。食わず嫌いという言葉は、音楽においては非常に有効な言葉ではないだろうか?結構、聴いてもいないのに嫌いと判断してしまう人が多い気がする。クラシックもヘビーメタルもカントリーもジャズも、みんな同じ音楽なのに何故なんだろう?その答えが慣れなんだと私は思っている。人間は育っていく過程で、それぞれの音楽に出会う。そしてよほどの探究心でもなければ、その慣れ親しんだジャンルで満足するし実際事足りるわけだ。枝葉を広げるには、ある種の偶然に任せなければいけない。それまで聴いた事もない音楽でも、彼氏彼女が熱心に聴いていたが為に何となく耳に馴染んでいつしか彼氏彼女以上にそのジャンルが好きになってしまった。別れても好きな音楽。そんな経験はないだろうか?私はめっちゃある。う〜ん、どうも単純に感化されるタイプのようだ。そのおかげで、私は割りと多様な音楽を聴いているのだし、それ事態は非常に幸運だったと心底思っている(泣いた涙の数だけ・・・。それを思うと悲しくなりますが)。それによって分かった事。それはどんなジャンルにも自分に合った名曲・名演は必ず存在するという事実だ。試しに暇つぶしにでも、未知のジャンルをジャケット買いしてみませんか?ほぼ九割がた失敗しますけどね(笑)世の中はそういうものである。そうではないか?
 ジョー・リン・ターナーは現在も日本を中心にそれなりに活動している。今年も盟友?グラハム・ボネットのいんちきアルカトラズと来日公演を行ったようだ。私は当然足を運ばなかった。ちょっとは迷ったんだけどね(グラハム目当てで)。実は行かない理由の決定打が私にはある。それがあの悪名高いDEEP PURPLEでの公演である。
 時は1991年。「SLAVES AND MASTERS TOUR」と銘打たれたワールド・ツアーの一環で、DEEP PURPLEの来日ツアーが武道館その他を行脚した。その時のヴォーカリストが、ジョー・リン・ターナーだったわけだ。リッチーに導かれての二度目の大舞台を、この男はそのルックスで手に入れたわけだ。凄いじゃないか、ジョー。やはり人は見た目なんだね。DEEP PURPLE経験者が四人にRAINBOW経験者が三人というこのバンドは、一部の人にDEEP RAINBOWなんて揶揄されていたわけだが、会場はほぼ満員だった。やはりリッチーのいるPURPLEの日本での集客率は並ではない。しかも結果的にみれば、これがDEEP PURPLEとしてはリッチー最後の来日だったわけだ。その後DEEP PURPLEが日本ではただの懐メロバンドになってしまった事態を思うと、かなり悔やまれる事実ではある。日本までの十数時間のフライトが1993年のリッチー来日直前脱退の理由だという事は誰も言わないが、それが実は真相だったと私は秘かに思っている。だって長〜いヨーロッパ・ツアーは我慢して回ってたんだから。何故ほんの一ヶ月が我慢できない?もちろんそれまでに蓄積されたものがあった上でのという意味だけれど。心底嫌になっている所へ長時間フライトなんてやってられるか、とリッチーが決断したとしても何の不思議もないというのは、リッチー好きであれば合点がいく話だ。リッチーを知らない方々へ。基本的にそんな人ですよ、リッチーは。いいぞリッチー、かっこいいなぁ。
 で、来日時のパープルのセット・リストです。1991年6月25日の武道館公演。オープニングはBURNです。二十世紀後半に集められた二十一世紀に残したい名曲リストに、幾多の名曲と共に名を連ねていた伝説の一曲。以下、Black Night〜Long live Rock'n Roll〜Child in Time , Truth Heats , The cut runs deep〜Hush , Perfect Strangers . Fire in the basement , Love conquers all . Difficult to cure , Knocking at your back door , Lazy〜 Highway Star , Smoke on the water〜King of Dreams〜Woman from Tokyo となっています。目玉はやっぱりBURNに尽きるのでしょうが、個人的には後のドゥギー・ホワイト・RAINBOWの時のアンコールでのBURNが数倍出来が良かったです。何しろジョーはバァァァァァアンではなく、バンバンバァァァンと歌っています。アホですか?ジョー。せっかくの名曲が台無しではありませんか?どうですか、みなさん。他のメンバーも、もうすっかり忘れてしまっていた曲なのか、どこかちぐはぐで名演奏とはいえないです。それでもそれ以外ではジョン・ロードの素晴らしさが目立つ公演だったと記憶しています。この公演に限っては、間違いなくDEEP PURPLEはジョン・ロードのバンドであると言い切ってもいいでしょう。それぐらい飛びぬけて際立っていました。キース・エマーソンから奪い取ったとも言われるハモンドもよかったですよ、本当。思わず帰りに屋台で購入した胡散臭いDEEP PURPLEオイル・ライターはジョンの記念として手元に袋詰めのまま手付かずで残っています。使わないというより、使う気にもならない代物ですが、冥途の土産に墓場まで持っていくつもりです。ありがとうジョン、いい薬です。
 さて、今回私が再見したのは、1991年2月4日にチェコスロバキア(この国名もいまではなくなってしまいました)でのライブ映像です。現地でTV放映されたものですので、そういう意味ではオフィシァルですか?違うの?このメンバーでは他にもアメリカでの公演も見ましたが、こちらはもうわけわかんなくて、ぐちゃぐちゃしてます。武道館での興奮がいやでも甦りますが、やっぱりジョー・リン・ターナーのパフォーマンスはどうもいまいちです。自身が参加したアルバムの曲では可もなく不可もなくといった感じですが、クラシックなPURPLE曲でははっきりと役不足と感じます。デヴィット・カヴァデールは、やっぱりそこそこ素晴らしいヴォーカリストだったのかもしれませんね。イアン・ギランのヴォーカルには異論のある人がたくさんいらっしゃるみたいですが、あの人のパフォーマンスは間違いなく図抜けてますよ。少なくとも70年代から80年代までのイアン・ギランはモンスター級の存在感をもったフロント・マンだったのだと、ジョーを見ていて痛感します。「スレイブス・アンド・マスターズ」アルバム自体は、私は実は高評価です。結構充実した内容だったと思います。が、DEEP PURPLEの一員としてコンサートに立つジョーは、ちょっと浮いていますね。このアルバムのみでジョーはバンドから解雇されました。リッチー以外のメンバーがイアン・ギランを戻す為に画策したと一般に伝えられていますが、この映像を見ているとそれは間違いなく正論ではないかと私は思います。歌えないギランなんかより歌えるジョーを支持したリッチーの意見に、どちらかというとメディアもファンも傾いている気がするのですが、それは絶対誤りですよ。少なくともDEEP PURPLEではイアン・ギランの方がフィットしています。同様にRAINBOWではジョーの方が当然フィットしています。大体リッチー・ブラックモアという人は言ってる事結構いい加減ですからね。何も考えてないような事を平気でいう人です。そこがまた私は好きなんですけど。リッチーの言ってる事は、大概当てになりません。そうではないか?リッチーを知らない方々へ。基本的にそんな人です。興味出てきました?
 この頃のセット・リストは曲順に変動はありますが、どの国の公演でもほとんど同一です。それだけ準備期間がなかったという事でしょう。ただこのチェコスロバキア公演及びヨーロッパの一部ではWicked Waysを演奏しています。ファンの方々、要チェックですぞ。本当、ファンって辛いよねぇ。
 今後もジョー・リン・ターナーは器用なヴォーカリストとして、細々と食いつないでいくのでしょう。ジョーを立ててRAINBOWの再結成を夢想している人もいるのかもしれませんが、私はそんなもの見たくないですね。はっきり言って、私はRAINBOW再結成にはもはや何の興味もありません。それはただのノスタルジーでしかないからです。よい演奏もサプライズもあり得ないでしょう。それよりもリッチーには、もう少し本腰入れてブラックモアズ・ナイトで名盤と呼ぶべきアルバムを作って欲しいです。何故なら、それだけの才能を持っているはずだから。そしてブラックモアズ・ナイトこそが、実はリッチーの才能が絶対的に開花する生涯を通じてのベストのバンドだと本気で思っているからに他なりません。以前、RAINBOWこそが世界最強のロック・バンドであると高らかに宣言させて頂きましたが、それはもう当然の事と勝手に決めさせて頂いた上で、あえて言おう。リッチー・ブラックモア個人としての魅力が最も発揮されているバンドは、間違いなくブラックモアズ・ナイトであると・・・。ごめん、ジョー。全然関係なくなっちゃったよ・・・・。


  「SLAVES AND MASTERS TOUR」  1991  チェコスロバキア
  DEEP PURPLE
    ジョー・リン・ターナー   (Vo)
    リッチー・ブラックモア   (G)
    ジョン・ロード       (Og)
    ロジァー・グローバー    (B)
    イアン・ペイス       (Ds)

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