DARK TALE OASIS

主に映像作品にふれて、思った事を書いていきます

「ダンス・オブ・ザ・デッド」を思う

                      マスターズ・オブ・ホラー

 マスターズ・オブ・ホラー企画において実施された人気投票は、大方の予想通り三池監督の作品が一位となったようですね。みなさんが何を基準に一票を投じたのかは分かりませんが、13作品も観る暇をつくるのはそれだけでも大変な事です。順位など気にせずに、楽しめたか楽しめなかったか、それだけが私の基準です。映画に対する評価とは、これに尽きるのではありますまいか?さて、DVDボックスの売り上げは順調なのでしょうか?もちろん私は購入しませんが・・・。これをきっかけにホラー映画が身近になった人なんてほとんどいないでしょうが、何事も地道な一歩が肝心であります。今日も地に足をつけて、ホラー探求の旅を続けて行きたいものであります。
 「ダンス・オブ・ザ・デッド」という題名からジョージ・A・ロメロを連想した人もいるかと思いますが、この作品を担当したのはトビー・フーパーという監督さんです。御大リチャード・マシスンの原作を、息子のリチャード・クリスチャン・マシスンが脚本にしたようです。ロメロの代表作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は、マシスンの代表作「地球最後の男」にインスパイアされているのは間違いなく、ホラー界は一蓮托生、仲良しファミリーに幸あれといった所でしょうか。
 トビー・フーパーは茨の道を歩く事を義務付けられた映画監督です。
彼が長編二作目として世に出した「悪魔のいけにえ」(原題のThe Texas Chainsaw Massacre という響きが実に素晴らしい)は、ホラー映画のみならずその後の映画界に絶大な影響を与えた名作として名を残しています。もしかしたら世にある全ての映画の中でも十本の指に入る作品なのかもしれません。スプラッター映画の代名詞とも言われている作品ですが、実際には直接的な残酷描写はなく、血糊もほとんどないのではなかったか?。それでも、否それだからこそ、この映画は無茶苦茶怖い映画だと断言してもいいでしょう。これだけ有名な作品であるにもかかわらず、あまり観ている人がいないというのも特筆すべき点ではないでしょうか?(無論、熱烈ホラーファンであれば、当然100%観ているはずですが)少なくとも履歴書の趣味の欄に映画鑑賞と書く人には、「風と共に去りぬ」やデ・シーカの「自転車泥棒」、チャップリンの諸作品等と共に、必ず見なければならない映画の一本であるはずだ。ホラー映画とカテゴライズされる作品でこう言い切れる作品は非常に稀だ。他にないとも言える。ヒッチコックの「サイコ」も、「悪魔のいけにえ」(この邦題がよくないのか?)には敵わないに違いない。とにかく映画としてのパワーが圧倒的なのだ。
 そんな「悪魔のいけにえ」の存在が、創造主であるフーパーを苦難に陥れるのだから、世の中とは分からないものだ。フーパーは職人監督として優れた手腕を持っているはずなのに、その腕を素直に発揮する機会がなかった。或いは自らが{いけにえ}となって自分の能力を素直に出す事を拒んだのかもしれない。プレッシャーという魔物がそこには見え隠れする。「悪魔のいけにえ」以後のフーパー作品はどれも中途半端だ。残念ながらフーパーは自分に敗れた映画作家なのだ。同じ事はロメロにも言えるのではないか?あまりにも有名になって色んな人間の意見を聞いている内に、肝心の自分自身が見えなくなってしまうのはよくある事だ。フーパーはマスコミとは一線を画すタイプであるので、その言動から何かを読み取る事は出来ない。一方ロメロはいろいろなインタビューにおいて、まるで自分がどこかの良識者になってしまったように殊更作品のテーマに言及し、自分の映画は決してゲテモノ映画ではないかのような物言いではないか。今、私達ははっきりと言わなければならないのかもしれない。ロメロ映画はどれも下劣なゲテモノ映画である、と。けれど「ゾンビ」のような圧倒的に面白いゲテモノ映画は過去にも、そしてこれからもないだろうと。作家達自らが、自分達をジャンル映画の枠に捕らえて、デュビビエやゴダールやオーソン・ウェルズに劣等感を持っている気がしてならない。それは悲しい間違いだ。もっと自由に自分の好きな物を素直に出せないものだろうか?最もこれが理想論だというのは当然の話だ。映画作りには莫大な金がかかるもので、スピルバーグのように好きに映画を作れる人はほとんどいない。それが現実だ。そのスピルバーグも迷走しているのだから、人生とは本当に面白いではないか。
 「ダンス・オブ・ザ・デッド」はパワーに溢れた作品である。人間の不可思議さや怖ろしさを端的ながら表現している。死者のダンスに表されている人間の内面の姿を、あなたはキャッチ出来たでしょうか?作品全体に世界が見えるのもいいではないか。トビー・フーパーは自身の居場所をこの企画の中に発見したのかもしれない。だとしたら、このマスターズ・オブ・ホラーという企画は大成功だったといえるだろう。もしかしたら、私にとってのマスターズ・オブ・ホラー・ベスト1はこの「ダンス・オブ・ザ・デッド」かもしれない。最も順位など何の意味もないとは先程語ったばかり、ただ一つ言えるのは、トビー・フーパーはもしかしたら復活したかも知れないという希望だ。
 人は希望無くして生きる事は出来ない。


  「ダンス・オブ・ザ・デッド」  2005  アメリカ

 監督  トビー・フーパー
 主演  ジョナサン・タッカー   ジェシカ・ロウンデス

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