DARK TALE OASIS

主に映像作品にふれて、思った事を書いていきます

「ランド・オブ・ザ・デッド」を思う

                      ランド・オブ・ザ・デッド

 奇蹟がそう何度も訪れるようでは、ありがたみが全くない。だからこそ、数少ない奇蹟に人は驚嘆し崇め奉るわけです。けれど、一度知ってしまった味を忘れられない強欲さが人間にはあるわけで、そうした期待を一身に背負った映画というのは、見終わった後の落胆は凄まじいものがあります。
 ジョージ・A・ロメロが新作を発表する。これだけでも一部の(もちろん私もその中に含まれるのだが)人達は、血湧き肉踊るわけです。おぉぉ、とか声を漏らしてしまうのです。しかも、今回は正真正銘のゾンビ映画であると。もう失禁ものです。口から内臓がゲロゲロと吐き出されてしまうのです。そんな恍惚の中、一抹の不安が脳の片隅にぼんやりと現れます。消したくても消えない思い。私の場合は、とんでもなくつまんない映画が出来るのではないか?という思いでした。私はロメロの大ファンですが、実は面白いと素直に思った作品は「ゾンビ」だけです。初期の作品「ザ・クレイジーズ」や「マーティン」や「ナイト・ライダーズ」はまだしも、「ゾンビ」以降の作品はどうもいただけません。どれもこれもクソみたいな作品のオン・パレード。それでも贔屓のロメロ作品だから、必死に良い所を探そうと試みるのですが、いつも挫折するのみでした。今回もまた・・・と、私が恐怖したのは当然の事かと思われます。
 いそいそと映画館へと向かい、ほどほどの入りの中適当な座席に腰を下ろした私は、はっきり言って逃げ腰でした。90分程の上映時間としり、嫌な気分に拍車がかかっていた中、ほどなく上映が開始。実にあっさりと映画が終了して、私はどうにも変な気分でした。作品自体は特に面白くもなく、相変わらずのチープさは健在で、演出力の希薄さもそのままなのですが、何かが違う気がしました。多分そう感じた人は結構多いのではないかと思うのですが、「ランド・オブ・ザ・デッド」はつまらない(もちろん面白い映画もありますが)ジョン・カーペンター作品を観せられた後みたいでした。ロメロ的つまらなさならまだ良かったのですが、カーペンター的つまらなさをよりによってロメロに観せられなくてもと理不尽な気分で家路に着いた事を、今もはっきりと憶えています。何故そう思ったのかという原因をつらつらと書き連ねるのには意味がないので(きっとどこかのマニアな人達が語ってくれるでしょう)止めておきます。一つだけ、私が思ったのはゾンビの新作を作る時に一番悩むのはロメロなんだなと、今更ながら実感したと言う事です。頑張れロメロ。願い続ければ奇蹟は訪れてくれるかも知れないじゃないか。ロメロ魂百までの私は、更なる新作を恐れずに待つ決意を固めたのでした。チャンチャン。
 って、これで終わりというのも悲しいので、もう少しだけ。ゾンビの怖さは不特定多数の怖さだと思います。無表情で動きがのろく意思を持たない。そこにこそ魅力があったはずなのに、時代は変わり近年のゾンビ達も様変わりしてしまいました。あまりにもたくさんの亜流が作られてしまったために、誰もが新味を求めて試行錯誤を繰り返してしまったおかげで、どういうわけかゾンビ本来の味が消えて、凡百のホラーヒーロー達と見分けが付かなくなってしまったというのは言い過ぎでしょうか?実はその先鞭をつけていたのも「死霊のえじき」(ゾンビは明らかに死霊ではないが)にてゾンビに知能を持たせてしまったロメロ自身というのもいやはやなんとも。「ランド・オブ・ザ・デッド」はさらにゾンビが進化してしまったわけですが、それこそがこの作品をつまらなくした原因だと私自身は思います。けれど、もしかしたらこれは過渡期の煮え切らなさがそうしたとも言えるのかもしれません。走りまくって、冗談をいいながらチームプレイで人間を苦しめ、銃を乱射するゾンビにも、面白い映画を作る素質は十分にあるのではないでしょうか?ロメロも今更後には引けないでしょうし、この路線で傑作を作り上げて欲しいものです。私達(勝手に複数形ですが)は二度目の奇蹟を信じているのですから。
今回、DVDにてリラックスした状態で改めて見直して観ましたが、つまらないものはつまらないものですね、ロメロ監督。

  「ランド・オブ・ザ・デッド」   2005 カナダ・フランス・アメリカ

 監督 ジョージ・A・ロメロ
 主演 サイモン・ベーカー  アーシア・アルジェント

「私の頭の中の消しゴム」を思う

                      私の頭の中の消しゴム

 記憶。それはいつもはかない・・・。ふと、そんな文句が頭に浮かんだのですが、よくよく考えてみると、記憶じゃなくて記録でした。記録、それはいつもはかない。一つの記録は、いつも破られる運命を持っている。だったかな?確か「びっくり日本新記録」とかなんとかいうTV番組だったと思うのですが(覚えている人はいるでしょうか?)。私の記憶は、もはやあやふやで、はっきり覚えているのは番組のテーマ曲ぐらいでしょうか?スタートレック的なあれ(日本人には宇宙戦艦ヤマト的と言った方が適切でしょうか?)結構、子供心に好きでよく見ていたはずなんですが、思い出そうとしてみても、やっぱりテーマ曲しか浮かんできません。って、よくよく考えていると、本当にそんなテーマ曲あったっけ?という気もしてきました。自分の記憶に疑心暗鬼です。
 人間にとって忘れるというのは必然ですが、その場合は正確には完全に消去されてしまうのではなく、奥深くにしまいこまれて引き出せない状態ですよね。脳って凄いねぇ。普通に生活しているだけで、勝手に整理してくれるのですから。記憶。それは個の確立の中核を成している要素であると言って間違いないですね。IDとは、記憶の集積であるわけです。
 「私の頭の中の消しゴム」は、若年性アルツハイマーという病に襲われた美しい女性と、その女性を妻とし苦悩する男性のげに怖ろしき時間を題材にした映画です。世の中には常にブームが存在し、随分前にやたら記憶を扱った映画が乱発されていた記憶がありますが、さすが韓国映画といいましょうか、ブームが去った後に取り上げるのはもはやお家芸ともいうべきでしょう。話が外れてしまいますが、韓国映画に新しい何かを求める人はいるのでしょうか?韓国映画の面白い作品は、どれもどこかで観た事がある気がしませんか?定番の良さをそつなく生かし、美しい女性とカッコいい男性で魅せる。口で言うのはたやすいですが、実は大変な事だと思います。どんだけパクってもつまらない映画というのは実に多い。ホラー映画ファンなら実感としてその事が身に沁みているのではないでしょうか?
 この映画は面白いのでしょうか?私にはわかりません。白状しますと、それどころではなかったからです。ぽかんと二時間ソン・イェジンを眺めていたというのが、私の感想の全てです。それってどういう二時間よ、と問われれば、最高の二時間でしたと言うしかありません。私は常々思いますが、出ている俳優が好みかそうでないかで、映画というのは百八十度評価が変わってしまうものです。脚本がどうとか、演出がどうとか、どーでもいいじゃないですかそんな事。大体、観た映画を全てきっちり筋まで言えるなんて人いないでしょ?細かい所なんて、観た側から忘れていくんです、人間って。加山雄三の「若大将シリーズ」にしろ、エルビス・プレスリーの一連の作品にしたって、どれも場所だけ変えて筋は一緒じゃないですか。映画ファンというのは基本的に妄想過多な人達なので、出演者にどれだけ魅力があるかで作品の評価が大きく左右されるのは仕方がない面が多々あります。個人的にはそれでいいと思います。ただし、ここにも落とし穴はあります。俳優さん達に必要以上の感情移入をした場合、とんでもなくくだらない映画の時には監督に対して敵意すら覚えますね(笑)そりゃ大変なもんですよ、本当に。つまり、この映画も出来はきっと悪くなかったんでしょ。少なくともソン・イェジンはきれいでした。ただ、二度は観ない気がしますね。私のDVDコレクションには加わるでしょうけど、観ないだろうなぁきっと。
 それにしても、人間にとってこんなに怖ろしい病気が他にあるでしょうか?肉体の死より先に精神の死がくる。そんなセリフがこの映画にもありましたけど、死にもいろいろあるのですね。この映画の最もむずかしい点は、ラストがハッピーエンドに成りえないという点に尽きると思いますが、実際なんだかよくわからない感じに誤魔化されて終わったという気がします。この辺も人によっては突っ込む所なんでしょうか?私はどうでもいい気がって、しつこいですね。
 少し前になりますが、新宿のアルタヴィジョンでしつこいくらいに流されていたCMをふと思い出しました。腕につけるなんとかバンドとか言う品物を買って、世界の恵まれない人のために貢献しましょうみたいな事だったと思います。どうみたって恵まれた金持ちの有名人が次から次へと出てきて、口々に貧困は人災ですとか、貧困を無くそうとか、最もらしい事を真剣な眼差しで言うのですが、あれを見てみんなどう思ったのでしょうか?私は何のブラック・ジョークかと思ってしまいました。貧困とは富に付随する影だというのは、常識ではないのですか?金持ちが何故存在するのか。誰かが富を手にしていた時、世界のどこかで誰かが大金を失っているのは確実なのです。それがバランスなのですから。イラク戦争の後にアメリカがWIN WINの結果に終わったと言うのは明らかに嘘だと誰もが思ったはずですよね。あのCMに出ていた人達の一人でも、自分の言っている言葉に賛同して全財産を寄付した人はいるのでしょうか?貧困は人災です。まさしくその通りです。現在、先進国といわれる国々は、全て途上国といわれる国々からいろんなものを搾取して豊かな国を築いたわけです。その動きは今も全く変わっていないと思われます。そこには底知れない記憶が渦巻いているのは想像に難くありません。とてつもない負の記憶が、今私達に底冷えのする恐怖をもたらしているとも言えるのではないでしょうか?忘れていく事が恐怖ならば、忘れない事もまた恐怖なのですね。
 そのCMですが、出演者がいちいち指を鳴らすんです。パチン。パチンって。指を鳴らす度にどこかで貧困の為に人が死んでいるという事を告げているのは明らかです。何てグロテスクなCMなんでしょう。もちろん、言いたい事の趣旨はわかりますし、大切な事ですけどね。私には指を鳴らす著名人達が、死神に見えました。


  「私の頭の中の消しゴム」    2004  韓国

 監督 イ・ジェハン
 主演 チョン・ウソン(この人カッコいいね) ソン・イェジン

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